シューマンのピアノ曲集「子供の情景」
2015/12/27
ピアノ曲集「子供の情景」といってもピンとこない方も「トロイメライ」別名「夢」というとご存知な方が多いのではないでしょうか?
この「トロイメライ」という有名な曲は、シューマンのピアノ曲集「子供の情景」のたくさんの曲の中の1曲です。その他「鬼ごっこ」、「異国から」、「珍しいお話し」、「おねだりする子供」などまだまだ可愛い題名の曲が盛りだくさんです。
ここでシューマンの生い立ち、壮絶な人生を語らなければ「子供の情景」という作品誕生を語れませんので少々堅いお話しにもお付き合い下さいね。!
シューマンが生まれたのは1810年6月8日4男1女の末子として生まれました。
お父さんは、文学をこよなく愛し、書籍出版・販売業界を営んでいて幼い頃から数多くの文学書に囲まれる生活環境にありました。
おかあさんは、音楽を愛好しその関係から彼は音楽に親しんでいくことになります。
この父と母による環境が後の作曲家としてのシューマンに多大な影響を与えて行くことになります。
家庭の諸事情により大学は法学部を専攻しましたが、音楽家になることを諦めきれなかったようです。
ピアニストになろうとして当時の高名なピアノ教師フリートリヒ・ヴィークについて、猛烈な勉強をしました。
皮肉なことに無理な練習がたたって指の麻痺のために(現代では、この麻痺が拡散していっている事からジストニアという病気だったのでは?と言う説もあります。)ピアニストの道から本格的に作曲家に転向し素晴らしい作品を後世にたくさん残しました。
自身でピアノを弾くことが出来なくなってから作曲家となったシューマンだからでしょうか?時として生徒に指使いを教える時考えさせられてしまうことが多々あります。
実際に自身でピアノでメロディーを弾く事ができなくなった彼は考え方を変えれば逆に、ピアノの指使いなど考えず自由に作曲できたのかもしれませんが、講師としての立場からすると、この事は、意外とたいへんなんです。
ところでシューマンのその後の話に戻りますね。
ヴィークの娘で天才的なピアニストクララと熱烈な恋愛したシューマン。
師匠でありクララの父ヴィークの猛反対にあい一時はうつ病にもなりながらもやっと結婚にこぎつけました。
実はこのヴィークの猛反対の時期に「子供の情景」が生まれました。
シューマンには寓話と切り離せない曲が、多いとも言われています。その最も大きな理由は先ほどお話済みの父の書籍出版、販売業という家庭環境が根底にあるとも言われています。
そのことも加味しながら、
いつかクララと結婚出来、その中での自分たちの子供との幸せな家庭を想像して作曲されたそうです。
ですから、「子供の情景」という曲集を演奏する時は、子供目線から見た情景ではなく
大人目線で見た情景という事を忘れてしまうと全くシューマンの意図するものとかけ離れてしまいます。
生徒にには、この大人目線からというお話し必ずしてからレッスンを行っています。
クララとの結婚後はオーケストラの作曲を手掛けることが多くなりましたが、長女マリーを含め3人の娘の為に作曲した「子供のためのアルバム」があります。
ですから「子供の情景」とは意味合いが、全く違った演奏とならなければなりません。
どんな曲でも作品の中にこめられた背景を知ることは大事なことです。
背景を知れば知るほどその曲のイメージを膨らませやすいですし、感情移入もしやすくなります。
当然、情感豊かな演奏ができる事に繋がります。
ところでシューマンの晩年は、精神病を患いながら数々の名曲を作り続けます。
しかし幻聴が激しくなり、その幻聴のなかで彼が聞いた天使の声で作曲した「天使の主題による変奏曲」が最後の作品となり、精神病院で寂しくこの世を去った作曲家でした。
これだけ壮絶な人生の中で作曲されてきた曲が、現代に於いても「子供の情景」を始め数々の名曲を残してくれたのですね。
何はともあれ私事ですが、「子供の情景」の中では、「トロイメライ」と「異国にて」は私が最も好きな曲です。
シューマンの「子供の情景」という曲集を大人目線から、ぜひお聴きになってみて下さい。
同じ曲が今日のブログをきっかけに、きっと何か違った感覚で聴こえて下さる方が増えて頂けたら幸せです。
クラビアートピアノ教室 講師 田原礼子
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