バッハの曲をピアノで弾くことが楽しくなる為の4つのポイント
2017/03/18
バッハとベートーヴェンの20世紀最大の研究者でありピアニストといえばケンプ氏ですよね。
その偉大なケンプ氏 最後のお弟子である私にとって雲の上のような存在のM.T先生との出会いは、15年程前になります。
その出会いをさせて下さった方は、学友のM氏です。
M氏は、来日直後にお茶を飲みながらM.T先生と3人でお話させて下さったり、公開レッスン、プライベートレッスンを行なう機会をたくさん与えて下さいました。
また、M氏と一緒に私の発表会までお越し頂いた事もありました。
一介のピアノ講師である私ごときには
考えられない夢のような貴重な時間をたくさん作って頂きました。
M氏には、感謝しても感謝しきれません。
バッハの曲は、日本人のピアノを習う子供達は演奏する事が好きという子が少ない気がします。
M.T先生は
原因の多くは、私を含めた指導者が「バッハの曲の楽しさを子供達に伝えきれていない。」
とおっしゃっていました。
また、「ヨーロッパに比べて50年遅れている。」
とまで指摘されました。
度々、来日して下さる尊敬するM.T先生の言葉は衝撃と共に私の心に重くのしかかりました。
この現実が、M.T先生がドイツより日本に何度もお出で下さり指導し続けて下さる理由でした。
偉大なケンプ先生の研究されたバッハの楽しさや奥深さを日本人に残さなければとの使命感からだとおっしゃっていました。
私は、私がM.T先生の指導の中で得た僅かな知識でどれだけ伝えていけるか?
間違った内容を伝えてしまったらどうしよう!
などと思い悩みましたが
M.T先生の来日して指導して下さるお姿を何度も拝見させて頂いた一人として身の程知らずかもしれませんが
先生の使命感を無駄にしてはいけないとの思いから
ブログを書かせて頂く決心をしました。
前置きが長くなってしまいましたが、ここから本題に入らせていただきますね。
まず、私事で恐縮ですが、
娘もバッハを弾くことが大嫌いでした。
その娘や生徒さんが、M.T先生の出会いによってバッハ大好きになったのです。
では、なぜそんなにバッハ好きになったのでしょう?
日本の楽譜は、通常の楽譜と同じように
スラー(滑らかに繋げて弾く)スタッカート(音を切って弾く)などの記号が書かれているものばかりです。
M.T先生がおっしゃるには、それらの記号が的はずれのものが多いとのことでした。
そこで、少々お高いですがヘンレ版(輸入版)勧められました。
ヘンレ版には、全く記号ありませんでした。(日本の楽譜をすべて否定するつもりはありませんので誤解なさらないで下さいね。)
なぜ、ここにスラーやスタッカートをつけるのか?etc
なぜ? なぜ? なぜ?
この理由も分からず弾かされている事が嫌だったのです。
その理由を明確に丁寧に指導して頂いたお陰でバッハに魅せられるようになったのです。
娘や私の生徒がレッスンを受けさせて頂いた事で 私自身も勉強になりました
そして何より、あれほど嫌いだったバッハのレッスンを受けている娘や生徒さんが実に楽しそうなのです。
これには、本当に驚かされました。
そして更に、娘は幸せなことにレッスンをおまかせしている、
こちらも信頼と尊敬するピアニストS.S先生がM.T先生のレッスンを更に噛み砕いて説明して下さいました。
要するに何の勉強でも大切な復習をS.S先生にして頂いた事も大きかったんです。
その尊敬するS.S先生さえもバッハの曲に対する考え方が変わったとおっしゃっていました。
まだまだ私自身も教えて頂きたいことが山ほどある中で私の得た知識の中で好きになる理由を考えてみました。
バッハを弾くことが好きになる4つのポイント
1:明確な理由が分かり全く記号の書かれていない楽譜にも関わらず、自分自身で決まりごとを知った上で自由に弾けるようになった。
バッハは、皆さんも御存知のバロック時代を代表する作曲家です。
当時はまだピアノと言う楽器はなく
チェンバロという鍵盤楽器が主流でした。
チェンバロとピアノは、構造上も含めてかなり違います。
まず、この構造を理解出来る事がバッハが好きになる第一歩だと思います。
チェンバロではレガート(滑らかに繋げて弾く)で弾くことが出来ません。
2:現代のピアノでどのように再現したら良いかを知った。
当時の演奏を再現しようとした場合
音符の長さが短い八分音符(♪)レガートで
音符の長さが長い四分音符は、ノンレガートで
また、強弱は左側に付いている操作部分があって演奏しながらそこを動かします。
ですから、一音ずつ強弱をつけていくことは不可能でした。
この事を知る事で、現代のピアノで再現するとしたら
「テラス式」といって階段を登り降りをするように
「まとめた音」で音を大きくしたり、小さくしたりする意味が分かってきます。
3:更に一番大切な、正しいフレーズを自分で探す面白さを知った。
フレーズとは文章にたとえて言えば「昔々おじいさんとおばあさんがいました。」と言う文章があったとします。
これを極端に言えば「む かし むか しお じいさ んと~」なんて言ったら文章にならないどころか
何を言っているのかわかりませんよね。
それとおなじように楽譜上で正しいフレーズを自分自身で、探せる為に輸入版のヘンレ版を勧められたのです。
現に、私の生徒も自分自身でフレーズを探せるようになると「バッハが楽しい」と言い始めます。
バロック時代のバッハの曲はピアノで学ぶ場合インベンションから始まり、シンフォニア、平均律とレベルアップしていきます。
その後のモーツァルトやベートーヴェンの古典派以降の曲のように伴奏があってメロディーがある訳ではありません。
あえて例えるとすれば、合唱曲の感覚でしょうか?
インベンションは2声!
シンフォニア以降になると3声や4声で弾くことになっていきます。
ですから、2本の手で弾くことが出来るインベンションから習って行くこととなります。
一見 楽譜だけを見るとバッハの曲は、簡単に弾けるように見えます。
2声、3声、4声~etc どの音も 主役、伴奏ではなくメロディーなんです。
特に、シンフォニア以降になると手は2つしかありませんが、その2つの手で3つ以上のメロディー弾いていくのですから
ここで、指導者の指導力でバッハの曲を楽しく弾けるようになるかどうかが決まってしまうと私は思います。
4:2声や3声、4声の並行感覚を明確に両手で弾いた時のメロディーの美しさに魅せられる。
特にバッハのシンフォニア以降になると手は、誰でも2本しかありません。
そして、この2本の手で3声や4声のメロディーを弾いて行く訳です。
ここまでは、誰でも行なうことです。
ここで大事なことは、
何も記号の書かれて、いない楽譜を使って
先程から説明してきましたように
正しい意味のあるフレーズを、自分自身で探す事からはじめます。
この事が、まずバッハの曲を楽しいと思える入り口となります。
1声事のメロディーに印をつけたりして、その1声ずつ弾いて見ます。
正しいフレーズであれば、それぞれ美しいメロディーに聴こえて来るはずです。
その美しいメロディーを自分自身で探せるば誰でも嬉しいはずです。
そして、それぞれのメロディーを正しく明確に浮き立たせる。
そこで、やっと
それぞれのメロディーをのせて美しい並行感覚(ハーモニー)を知ることが出来る。
~後書き~
バッハの曲を楽しめる要因は一言で言うともっと自由に子供達が表現出来る指導を講師はしなければいけないという事です。
もうひとつ大事なことは、バッハの曲すべてがヘンレ版が良いとは、言えないそうです。
曲によっては、ペータース版etcなどもお勧めのようです。
また、M.T先生は当時の楽器を思いえがいてのレッスンを行なう事が多いですが、
こうも おっしゃっていました。
バッハ氏が現代のピアノに出会えていたら、どのように弾いたかしら?」
ですから、娘が音大受験の為のレッスンを受けた時のレッスンは いつもとまた違っていました。
余談ですが、音大受験の場合 目指す音大によってはその音大に合わせた演奏も必要な事もあります。
その為わざわざ極端な話東京の音大を受験する為に北海道や沖縄からでも定期的に目指す音大に通わなければいけない現実もあります。
そう考えると神奈川県民の私達は幸せと思わなければいけませんね!
とにもかくにも、ピアノを学ぶ皆さんが一人でも多くバッハの曲を好きになって頂き
M.T先生への御恩に少しでも関われたら幸せです。
クラビアートピアノ教室 講師 田原礼子
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